便乗値上げとデフレ

橘川雄一|2024.2
長い間"便乗値上げ"という言葉はネガティブな意味で使われていた。
2014年と記憶するが、消費税が上がりメニュー価格が変わっていた。私がカフェで注文をするのに並んでいる時、前で注文していた老人が値上げしたメニューを見て「便乗値上げ」だと騒いでいた。その時以来"便乗値上げ"という言葉が気になっている。

企業は便乗値上げしないために"企業努力"と称する間接経費の削減に取り組んできた。涙ぐましい努力、その中に従業員の給与が含まれていることに何故かジャーナリストは騒がなかった。ベテラン社員の給与に手をつけると労働組合が騒ぐので、新入社員をターゲットとした。若者の正規雇用を減らし非正規雇用とし且つ給与を抑えた。
"風が吹けば桶屋が儲かる"的な論理で"便乗値上げ"と叫ぶことが→若者の職を奪った。

ここ20年間でヨーロッパの賃料が平均50%上がった中で日本は0%上昇、直近の調査で先進7カ国の中で国民一人当たりの収入が最下位だったイタリアに抜かれ日本が最下位。流石に政治は"便乗値上げ"とは言わず"通常のインフレ"と名を変えて、値上げを積極的に認める姿勢になった。経産省からも、「納品先の企業から必要な値上げについてどのような対応をされているか」というアンケートかを来ている。"便乗値上げ”を拒否されていないかのという調査である。

バブル崩壊から30年、"値上げは背徳"といい、若者の職と給与を奪った価値観、これから少し変わるのかしら。
私の位置する建設業では、目の回るような値上げである。いいことなのか辛いことなのかは、後年次の世代の判断。