国立の建物で初のB8F建築へ

橘川雄一|2024.5
1979年、国立国会図書館"新館"の設計発注が我が前川國男事務所(MIDO同人)に建設省(当時)からあり、事務所内で私を含め3名のチームが組まれた。
"本館(1961年竣工)"は中央部に床荷重の重い車庫を配しその回りにオフィス部門を配しているという、極めて完結したFormをしていたので"新館"には異なるFormを求めた。
延床75,000㎡の内約50,000㎡が書庫棟。指定敷地全床面積を地上に設ける案を作成したが、隣に厳然と存在する国会議事堂を見下すボリュームになる。かつ"本館"或いは諸外国の"国立図書館"も書庫は階高の低い倉庫として設計されていたが、"新館"は書庫内も館員(国家公務員キャリア)の作業がかなりあるという事で通常のオフィス階高(空間)を要望された事から書庫棟のボリュームをコンパクトにすることはできなかった。国会議事堂以上のボリュームが出来てしまう。
様々なスタディを重ねて"本館"とは別な構成『地下階に書庫、地上階に閲覧及びオフィス』とする事が、国会議事堂そして最高裁判所とのバランスから合理的と判断された。ただ50,000㎡を地下階に収めるには8層分のボリュームGL -32mを必要とする。
避難系も消防法上も環境上からも設計にかなりの腕力を必要としたがB6Fまで光庭をおとす等設計にかなりの未体験ゾーンの設計作業が続いた。
施工は清水建設JVが担ったが、技術研究所で地下掘削の実験を繰り返して土留めSMWの安全を確認した。またこの深さだと常水面の下に入る部分がかなりになり、建物だけの重さだと船のように"浮く"という事でアースアンカーを打って浮きを止めた。
一般建築の+50%の耐震力を持つ建物であることもあり、築40年経つが、新築時の同じ雰囲気を未だ湛えていると思っている。