前川國男と家具

橘川雄一|2024.7
シャルロット・ペリアンと言うフランスの建築家、家具デザイナーがいる。1903年生まれ、1927年にアトリエを構えサロン・ドートンヌに出展した"屋根裏のバー"でル・コルビュジエに認められ請われてコルビュジエ事務所に入所している。同年入所している師前川國男とは同期生という事になる。
シャルロットは、一般的にコルビュジエ作と言われる家具の多くに関わっている。テレビドラマでよく見るステンレスフレームと黒い革で印象的なソファー(LC2)は、クレジットとしてはコルブュジエ、シャルロットそして従兄弟のジャンヌレである。長椅子(シェーズ・ロング)も同じクレジットである。

前川國男は自らの設計した建物には必ず自らのデザインの家具を置いた。既製の家具を置くことはない。事務所に家具デザイナーが2名いて、建築と同じで前川はいつもテーブルに座り赤鉛筆を走らせて形にこだわっていた。
前川國男が自分の空間に自らのデザインされた家具を置くのは、ル・コルビュジエ事務所での経験から空間と家具は一体であると考えたからである。前川國男の硬質な空間に優しさを感じる木質形家具が必ず置かれていた。

シャルロットは前川國男そして次にコルビュジエ事務所に入った坂倉準三との接点を持った事から日本に親しみを感じ、コルビュジエ事務所を1937年に辞した後1940年日本の商工省からの招聘で来日し、当時の民藝派である河井寛次郎、柳宗理らと交流している。コルの近代デザインと民藝派デザインとの差を見ると幅広くデザインを受け入れていた事を感ずる。

2011年「シャルロット・ペリアンと日本」と言うタイトルで神奈川県立近代美術館で展覧会が開かれている。主導したのは当時ぺリアンの娘ベルネット・ぺリアンと親交のあった長門佐季(現神奈川県立近代美術館館長)、360点にも上る貴重な資料をベリアンの事務所で見つけ、展示会開催にたどり着いている。長門の話を聞くと人と人との繋がりの大事さをおもう。

"近代"という時代、ル・コルビュジエと言う天才のもとに前川國男などの多くの次の世代を担う人材が集まっていた事と、その中にシャルロット・ぺリアンと言う家具デザインの世界で羽ばたく人材もいたことを知る。