"時"で芸術をつくる
橘川雄一|2024.12
芸術は、2Dにしろ3Dにしろ"時"は永遠という常識感が我々にはある。4万年前と言われる北イタリア・アルタミラ洞窟に描かれた壁画、そして前2C.古代ギリシャ・ミロのビーナス。例えようもない素晴らしい芸術、永遠という"時"を刻んでいる。
近年の技術革新の進歩で芸術は大きく変容を始めている。
永遠性を持つ"もの"ではなく、その"時"だけにしか存在しない芸術が現れている。私が見たのは中谷芙ニ子、team Lab猪子寿之の2作品。
姫路市立美術館が4年かけて、追い求めた"オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト"が2024年隈研吾の展示「オノマトベで表現する姫路城、圓教寺、姫路市立美術館」で締めを迎えている。
2021年日比野克彦(明後日のアート)、2022年杉本博司(本歌取り
-日本文化の伝承と飛翔)、中谷芙ニ子(白い風景―原初の地球》 霧の彫刻)、2023年team Lab(無限の連続の中の存在)、2024年隈研吾(『コツゴツ』哲学 過去から未来へ生き残るデザイン―髙田賢三へのオマージュ)の5氏で、"姫路を舞台"に芸術で姫路を表した。
"時"で芸術を表現するする2氏。
中谷芙ニ子は、「霧の彫刻家」。姫路城が後背に見える姫路市立美術館の前庭に霧を一面に咲かせ美術館の足元を曖昧にした。霧+美術館+姫路城の風景が幻想的で美しかった。30分おきに1分間、霧を吹くのをやめると直ぐに消え、元の現実に戻る。イリュージョンといえばイリュージョンだが、"消える芸術"も美しい。
teamLabは、東京大学工学部計数工学科卒の猪子寿之の頭脳が繰り出すコンピュータサイエンス。プログラミングされた映像機から繰り出す光の粒。同じ紋様はない。
常にそして永遠に変化する。掴みようのない光が周りをめぐる、
光が眼球に訴える力(脳への訴求力)の凄さを、元の現実空間を戻った時に強く感じる。"美"を追求するための表現だが、これだけのチカラを持った表現方法は、他の利用目的を持ったら凄い力になるのだとは感じた。原子力エネルギーと同じかな。
医学の世界に工学的な思考を入れて"再生医療"が一気に進歩したように、
美術的世界に猪子(計数工学)的な表現方法が入って、新しい美意識が現れる。
やはり"外圧"がないと日本は変わらないという。ただ日本人から言うと、"和様"という落ち着いた佇まいは居心地が良い。"黒船"前の260年間進歩のなかった江戸時代は、きっと"昨日と同じ今日"を迎えて安心の日々だったのではないか。
そうそれが今の日本の体たらくの原因ですね。「今日と違う明日を求めて日々前進!」
是非猪子的次の時代を作りましょう。
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